想像力で世界を創る物語『マイマイ新子と千年の魔法』。昔の、田舎の子どもの体験すべてが詰まっている映画です。
『この世界の片隅に』の片渕須直監督が手がけた「マイマイ新子と千年の魔法」は、山口県防府市を舞台に主人公の新子が千年前の世界に住む女の子を想像し、世界を作り出していく物語です。
千年前の平安の世界と、現実の世界が交互に描かれます。
新子は千年前の町の知識を知恵者のおじいちゃんから授かり、現実世界では東京から来た喜伊子と仲良くなり、喜伊子からは文化的な刺激をうけていきます。
想像力で世界を創る
新子のいた昭和30年代、田舎にはなんにもありません。おもちゃもテレビも映画も本も、今のように種類があるわけではない。
だからこそ想像力が試されるのです。
空き地は戦場や野球場に、防空壕や穴は秘密基地に。
新子も自分の宝物を庭に埋めてガラスで覆って、自分だけの宝箱をつくっています。(妹に見つからないためでもある)このセンスがとてもすてきでした。
おじいちゃんの言う「千年前の町」も、石碑と田畑の水路がかろうじて面影をとどめているくらいで、遺跡や遺構があるわけじゃない。
でもそこから新子は想像の平安の町をつくってしまいます。
モノがないだけ、いくらでも空想を広げることができたのでしょうね。その想像力が、新子がこれから生きていく力になるんだと思います。
新子がモデルにした「千年前の女の子」は、実際に当時赴任していた清原元輔の娘である清少納言。後の才媛も昔はおてんばだったのかもしれません。
「マイマイ新子」には、昔の田舎の子どもの体験がすべて詰まっている
私も田舎の子どもでしたから、新子や喜伊子が体験したようなこと、覚えがあります。
小汚い男の子が貸した色鉛筆を不格好にしちゃったシーンは、「ああ、昔はこういう男の子いたなあ」と思ったり。
転校生のお家に行くと、違う文化の雰囲気を感じ取ったり。
ときおり田舎で起こる事件や、大人のヒソヒソささやく噂話も「そうそう!」と思いました。昔の子供の視点からみると恐ろしくゾワゾワと落ち着かない感じなんですよ。
一緒に冒険をした友達は、ずっと一緒にいると思っていたけれど、今と違って連絡がなかなかできないので、きっと一生の別れになってしまう。
そんな寂しさも昔の子どもの頃だれしもが体験したことじゃないかなと思うのです。
新子と、すずさん
「マイマイ新子と千年の魔法」と「この世界の片隅に」この2つの物語はどこか地続きのような着がします。
両作品とも、時代が10年ほどしか離れていないし、山口と広島、同じ中国地方が舞台です。主人公はふたりとも空想がすきな女の子です。
もしかしたら、すずさんの生まれるのがもう少し遅ければ、戦争にあわずに、新子のように空想を巡らせて絵を描いていたのかも。
あ、でもそれだと周作さんにはであえないか…。

