『のぼうの城』は、なんというか、愛すべきあほうたちの物語です。
敵も味方も。のぼうさまはもちろん、彼に従い、圧倒的不利な状況で戦うことを決意する家臣や農民たちもあほうです。
しかし、それにあえて応えて正々堂々、戦おうとする三成もあほうといえるでしょう。
そんな愛すべきあほうたちが、真剣に繰り広げる世紀の合戦。おすすめです。

野村萬斎さんのぼうさま
この映画は、のぼうさまを野村萬斎さんが演じた時点で成功しているって思いました。
アホすぎず、かっこ良すぎず、子どものようなのぼうさまが萬斎にぴったりで。
第一、クライマックスの田楽シーンは踊りの基礎がない役者さんが演じては説得力がなかったでしょうね。
あれは、萬斎さんにしかできない演技だと思います。
クセのある成田家家臣団
丹波、和泉、靱負、成田家の個性的な家臣たち。武闘派で沈着なの佐藤浩市さんの丹波、直情的な和泉のぐっさん、若者らしい生意気さと真っ直ぐさを併せ持つ、成宮くんの靱負。みんなみんな、すばらしかったです。
榮倉奈々ちゃんの甲斐姫もやんちゃで可愛らしかった。欲を言えば、もう少し強気でもいいくらい。
のぼうさまと甲斐姫が、百姓たちを本丸に避難させるため、のぼうさまと一緒になって泥遊びに興じたり、手に手をとって土足で城の中へ入るとこは、ほっこりしたなあ。
なにごともなければ、このふたり、いい夫婦になっただろうに…。
こちらもクセのある秀吉家臣団
500対2万の軍勢の戦い、巨大な堤を使った水攻めなど、とにかくスケールの大きい映像に圧倒されます。よくもまあ、これほどの広さを水攻めにしようなんて思ったもんです。三成は。
戦いに理想を追う石田三成と、苦労人の親友・大谷吉継。
上地雄輔さんは明るいイメージがあるので、最初、三成役はどうかなあ、と思ってましたが、なかなか堂々としておりました。
複雑な立場の吉継さんは、いろいろな役をこなせる山田孝之さんにぴったりですね。
長束役の平岳大さん。舞台『ピグマリオン』もそうだったけれど、こういう、上から目線の尊大な物言いの役がすごく似合う。でもちょっと可愛げがあって、憎めないところがいい。