『第三の男』は第二次世界大戦直後のウィーンを舞台にした名作ミステリー映画。それと同時に、ままならない恋の物語でもあります。
『第三の男』あらすじ
戦後のウィーンはソ連、アメリカ、イギリスなどに一時的に支配され、それぞれの国の警察が治安を守っていた。
文無しの西部劇作家、ホリーが友人ハリー・ライム(オーソン・ウェルズ)をたずねてウィーンへやってくる。
やがてホリーは、友人が悪に手を染めたことを知り、警察に協力することに。
一方、ホリーはハリーの恋人・アンナに恋し、彼をあきらめるように説得するが、彼女は彼の誘いを振り切り…。
アメリカの正義、敗れる
アンナはハリーに利用されているのですが、だからといってホリーにはなびかない。彼の正義感は空回りして伝わりません。
また、有名な観覧車シーンでハリーは、ホリーにこう言います。
「スイスの同胞愛、そして500年の平和と民主主義はいったい何をもたらした? 鳩時計だよ。」
戦争によって富を得たハリーが平和を皮肉ったセリフです。
そして、アンナはこう言います。
「彼はもうわたしの一部なの。」
そりゃ、空気読まない貧乏男より、ミステリアスで自分には優しい金持ちの悪党のほうがいいよな。
きっと、彼女はハリーがどんなに悪党でも、自分が利用されたとしても、ハリーのことは裏切れないのでしょう。
「強いアメリカ」への警鐘
それにしてもホリー、かっこ悪いというか、実にトラブルメーカーっぷりを発揮しています。
彼がハリーの死の真相を探ったために目撃者の門衛は殺されてしまいます。
惚れたアンナを国外退去の危機から救っても「ハリーを裏切るなんて!人でなし!」とか言われてしまう。
頼まれた講演会は散々な結果だし、時々アンナから「ハリー」(恋人の名前)って呼ばれちゃうし。ホント、いいとこなしなんです。
これは私の想像ですが、1950年以前の映画の中ではいつも「正義感に満ちたハンサムで強引なアメリカ人青年」が勝ち組でした。
そんな強いアメリカの男が悪に敗北したという点が興味深かったです。
オーソン・ウェルズは、当時最も豊かで充実していたアメリカ人に対し、この頃から警鐘をならしていたのかもしれませんね。
モノクロならではの魅力
50年以上前の作品ですが、今見てもゾッとするくらいの映像美。特に、ハリー・ライム登場のシーンはかっこいい!
暗闇にほんの少し、窓からの明かりが射し、ハリーの顔が映る。ハリーが口元に笑みを浮かべた瞬間、また闇にもどる。
モノクロならではの迫力と映像。そして、ミステリーとしても一級品。

