『国宝』すごい映画でした。握りしめていた手ぬぐいはぐちゃぐちゃだし、鑑賞後はしばらく立ち上がれない。そして、気がついたら泣いていました。
『国宝』あらすじと名シーン
主なあらすじはこちら。大まかな流れは原作を踏襲していて、そこに映画ならではの演出が加わっています。
映画では、エピソードを喜久雄と俊介の周囲にしぼり、二人の関係性と芸の道の険しさを描いています。
映画ならではの演出
原作も、映像が浮かぶような描写でしたから、それを映像にしたらどんな風になるのか。と思っていたら、いや、圧巻でした。
冒頭の雪の殴り込みシーンは修羅の中の美しさがあり、歌舞伎編では、二人で踊る娘道成寺はもちろん、田中泯さん演じる老女形の所作の美しいこと！
そして、心中ものである「お初徳兵衛」を演じている喜久雄の舞台にあわせて、舞台の外では春江が俊介の手を取って逃げるシーンは素晴らしかった。
歌舞伎役者の一生
「これ本当に映画ですか？歌舞伎役者の一生を特殊な方法で記録し続けたんじゃないんですか？？」見終わった後、本気でそう思いました。
それくらい、二人の役者の一生とその舞台がリアルですさまじくて。
物語のラスト、人間国宝となり、年を取った喜久雄の姿が映し出されます。老年の喜久雄はなんというか、透明感があるんです。
自分をどんどん削ぎ落とすことで「役の器」となっているように感じました。
登場人物と役者
「お顔がいいと邪魔になりますよ」とは、老女形・小野川万菊のセリフですが、私も最初、吉沢亮と横浜流星には、イケメン俳優としての認識しかありませんでした。
もちろん、ふたりとも大河の主役を演じている実力俳優なのですが。しかし「国宝」を見てから認識が変わりました。いやもう、すごい役者さんたちですわ。
横浜流星さんはお顔の骨格が細いので、化粧をして踊ると、中村七之助さんを彷彿とさせるんですよ。
二人とも、挫折や苦悩が顔ににじみ出ているし、舞台は表現力は女形そのものこれを「演技」で演じているのか…。
また、脇を固める人々もすごくて。
渡辺謙さんや寺島しのぶさん（実際に梨園の娘さんで歌舞伎役者の母）、彼らが目線を動かすだけで感情が伝わってきます。
田中泯さんて男らしい印象があったのですが、映画では骨の髄まで女形なのがもう、すさまじい。骨の髄まで女形だわ…。
覇王別姫と梅蘭芳
映画『国宝』に関して「覇王別姫のようだ」とのつぶやきをSNSで見かけました。
『覇王別姫』は二人の京劇俳優を描いたチェン・カイコーの作品。歴史や事件に翻弄される役者人生を描いたこの作品は、確かに『国宝』に通じるものがあります。
そして同じく、芸に生きる京劇の名俳優の『花の生涯～梅蘭芳～』もまた『国宝』に通じるものがあるんです。時代や人に翻弄されながらも、自らの芸を極めていった喜久雄、俊介、そして梅蘭芳…。
芸を極める役者の魂は、国や時代が違っても同じなのかもしれません。
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