『舟を編む 〜私、辞書つくります』は、言葉の海を渡る舟、辞書をつくる物語。
失恋をしたみどりに、馬締がかけてくれた言葉は意外なもので…。
『舟を編む 〜私、辞書つくります 第二回』あらすじ
恋人が去り、これまでの自分の言葉の刃に気がついたみどり。気を取り直して辞書の仕事にとりくむものの、膨大な言葉の前にに途方に暮れる。
そんな時、製紙会社の宮本と出会いお互いの仕事について語りあうことに。
馬締のように仕事への情熱がまだ持てない二人は、辞書の完成までに仕事への愛情を培っていこうと誓い合う。
言葉の面白さ
『舟を編む』には、毎回印象的な言葉が使われています。今回はこちら。
岸辺さんには あきらめて、あきらめて あきらめて欲しい。
失恋したみどりに対し、馬締さんが送った言葉です。
普通「あきらめる」と言われたら、断念の方を思い浮かべます。しかし、「あきらめる」には「明らめる(真実を明らかにする、明るくする)」という意味もあるんです。
現代って「諦めず最後までがんばろう!」が美徳とされていますが、「諦める」先にしかない「明らめる」があると私は思うのです。
本屋大賞を受賞されたファンタジー作家上橋菜穂子さんも「あきらめることでみつかる新しい道」について語っています。
また、日本語で最も少ない「る」を最後にすれば、しりとりに勝ちやすいのだとか。このエピソードは漫画『舟を編む』で松本先生がおっしゃっていました。
「恋愛」の用例
辞書の「恋愛」の用例に必ず「異性」「男女」とあるのに違和感を感じたみどりは、つたないながらも必死に伝えようとします。
うまくなくていいです。 それでも言葉にしてください。 今、あなたの中に灯っているのは あなたが言葉にしてくれないと 消えてしまう光なんです。
同性愛者の人が辞書を引いてこの用例を見つけた時、さみしい思いをするのではないかと。事態を重く見た馬締さんは松本先生たちを招集。
しかし、言葉の改定は一筋縄ではいかず、みどりは「恋愛」の語釈を考えることに。
特定の二人の 互いへの思いが 恋になったり愛になったりと 非常に不安定な状態
今でこそ、辞書の「恋愛」には「特定の二人」と書かれていますが、2017年当時はまだLGBTへの理解は浸透していなかったのでしょうね。
そんな姿をみたバイトの天童がみどりに助け舟を出してくれます。実は彼は同性愛者で、彼女の発言に心を揺さぶられたんですね。
いつもいがみ合っている二人ですが、なかなか良い舟の仲間になりそうです。
- 『舟を編む~私、辞書つくります~』第一回
- 『舟を編む~私、辞書つくります~』第二回
- 『舟を編む~私、辞書つくります~』第三回
- 『舟を編む~私、辞書つくります~』第四回
- 『舟を編む~私、辞書つくります~』第五回
- 『舟を編む~私、辞書つくります~』第六回
- 『舟を編む 〜私、辞書つくります~』第七回
- 『舟を編む 〜私、辞書つくります~』第八回
- 『舟を編む 〜私、辞書つくります~』第九回
- 「舟を編む~私、辞書つくります~』最終回
『舟を編む』メディアミックス
これまで、様々なメディアミックスが生まれた『舟を編む』ですが、それはきっと、原作の『舟を編む』が普遍的な物語だからなのだと思います。

