映画『舟を編む』素晴らしかったです!細部にまでこだわった映像、役者さんたちの役へのシンクロ率の高さ。原作ファンも満足の出来でした。
「舟を編む」は「大渡海」という辞書編纂に関わる人々の、13年間のドラマ。そして、主人公・馬締の成長が描かれています。

丹念に作りこまれた「舟を編む」の世界
オリジナリティを出そうとして、原作を無駄に改変するドラマが横行するなかで、映画の「舟を編む」は、原作を深く深く掘り下げています。
原作を理解したうえで、映像としての新しい表現を生み出していたと思いました。
馬締さんが、かぐやさんに恋をして、用例採取カードにかぐやさんのことを書き込むところなんて、原作に書かれてもおかしくない表現でした。
馬締さんの下宿のレトロな感じとか、用例採取の様子とか、原作のイメージが細部にわたって映像の中に作りこまれていました。
役者さんたちのすばらしい演技
松田龍平さんは、この映画でアカデミー賞とるんじやないかってくらい名演だったと思う。実際、その後、最優秀主演男優賞を獲られました。
馬締という不器用で口下手でまっすぐな人間の存在感と、成長の様子がすばらしい。実際に神保町をさがしたら、馬締さんがいそうな気がする。
馬締(まじめ)さんは最初、思ったことをうまく口にすることができませんでした。でも、辞書づくりに関わるうちに、少しずつ言葉を選び抜いて、懸命に伝えようとするんです。
その言葉たちは、多少堅苦しいのだけれど、そこにはうそやおべんちゃらは無いのです。だから、かぐやも西岡も、馬締さんのことが好きなっていったのでしょうね。
宮崎あおいさんはさすがの存在感。板前の時の凛とした佇まいがすばらしい。ただ12年後の設定で全く老けていなかったけれど。
オダギリジョーさんの西岡役、チャラいけれど実は情に篤いところとか、いつの間にか馬締さんを信頼してゆくところとか。いろんな引き出し持ってる俳優さんだなあ。
恋人役の池脇千鶴さんも、派手なんだけど、よく気のつく女性を好演してました。
黒木華さんの岸辺みどりも可愛くて。最初は現代的な女子って感じだったのが、どんどん辞書編集部になじんでいく様子が微笑ましい。
BGMのピアノの旋律が美しく、映画の印象にぴったりでした。

『舟を編む』メディアミックス
これまで、様々なメディアミックスが生まれた『舟を編む』ですが、それはきっと、原作の『舟を編む』が普遍的な物語だからなのだと思います。