古書店が軒を連ねる東京・神保町。そんな本の街を舞台にした映画『森崎書店の日々』を鑑賞。本好きには、たまらない映画です。
『森崎書店の日々』あらすじ
貴子は、社内恋愛の恋人から突然「彼女(貴子とは別の女性)と結婚する」と告げられ、会社にいづらくなり辞めてしまう。
自堕落な日々を過ごしていた貴子のもとに、ある日一本の電話が入る。
東京で古書店を営むおじのサトルから、店を手伝わないかと誘われるまま、貴子は神保町にある森崎書店で暮らすことに。
今までまったく知らなかった本の世界。
貴子は神保町で暮らすうち、徐々に古書店の生活に慣れ、喫茶店でアルバイトをするトモコや高野などの友達もでき、徐々に明るさを取り戻していったのだが…。
価値をつくる
本好きカフェ好きの私としては、毎日思う存分本を読んだり、コーヒーを読みながら本を読めたらいいなあ、理想の生活だなあ…。
と思うのですが、でも、そうした幸運をさずかるのは、本にあまり興味のない人だったりするわけです。
貴子も最初は、本には全く興味がなくて、常連客に本について語られてもちんぷんかんぷん。ですが、なにせやることがない。
それで当てずっぽうでそこらにある本を読んでいくと、徐々に本の魅力にとりつかれていきます。
映画の中で、サトルおじさんが値段が決められない本を貴子に託し「好きな値段をつけていい」といったのですが、貴子はその本を読み終わって値段をつけるシーンは、金額が映されません。
それが、友人のトモコが語る「自分で価値をつくる」という言葉につながっていくのでしょう。
自分で価値をつくる、その可能性に気がついた貴子は、神保町を去る決心をします。いつか、彼女が価値をつけた本を、選んでくれる人(恋人)がくるといいな。
サトルおじさんと貴子
サトルおじさんと、貴子の距離感がいいんです。親子でもなく、恋人とも違う、独特の距離感があって。
だからこそ、サトルさんは貴子を心配するけど、あまり深入りせず、彼女が心を開くまで待っています。
やがて、貴子が本当のことを話した時「その男に謝罪させよう。向き合わないと過去に囚われる」といい、相手の家に押しかけたりもする。
サトルさん自身も若い頃、傷ついて、迷って、放浪の旅にでたり、奥さんに逃げられたり、さまざまな苦労があったので、貴子を自分の若い頃と重ねていたのかもしれません。
だから、放っておけないんでしょうね。
それにしても、昔バックパッカーで、古書店経営なんて、そんなステキなおじさん、私も欲しい…。
原作『森崎書店の日々』では、映画の後日譚や、サトルさんの奥さん、桃子さんも登場。こちらも面白いのでぜひ。