NHKアニメ『cocoon ~ある夏の少女たちより~』は、少女たちの悲壮な戦争体験と空想世界…。なのですが、アニメと原作では「戦争」と登場人物以外はまったく違う物語でした。
『cocoon ~ある夏の少女たちより~』あらすじ
とある国。少女たちは戦争のため、土木作業に駆り出されていた。辛い労働だけど仲間たちがいるから楽しく、笑い声に溢れていた。
内気な少女・マユは親友のサンのために、プレゼントをつくるものの手渡せずにいた。
その後、少女たちは洞窟での野戦病院に移動し、治療を手伝うことになるが、戦況はしだいに悪化。病院は封鎖され彼女たちは自力で南の岬を目指すことに。
少女たちの行く手に待ち受けるのは…。
美しく、素晴らしいアニメ(原作を知らなければ)
美しい、とてもとても美しいアニメでした。原作の膿やウジや血を洗い流して、洗いたての新しい服を着せたような美しさがありました。
原作では沖縄戦をモチーフにしていましたが、アニメでは場所が特定されていません。
日本のような、ヨーロッパのような色とりどりの町並みに美しい風景。かわいい防空頭巾(それともケープ?)をつける少女たち。
血や暴力、男性に怯えるサンのため、マユがおまじないをかけたことで、サンの目には銃撃された少女たちの体から美しい花が流れているように表現されています。
原作者の今日マチ子さんも、著作『いちご戦争』の中で甘いお菓子や花で戦争を表現しているので、そのイメージなんでしょうか?
主人公サンの成長と変化(ネタバレ)
当初、主人公のサンは他人の意見に流される女の子でした。そのせいで仲間が犠牲になってしまい、傷つくのですが、恐ろしい経験が彼女を成長させたのです。
自分をレイプ(未遂?)した兵士を殺そうとするマユに「そんなことしちゃだめ」と止めたり、集団自決をする仲間に自分は加わらないと意志を示すサン。
最後は、男の子だったマユの正体を知ってもやさしく受け止め、銃を構える兵士にも毅然とした態度をとるまでになりました。
最後は、マユの思いを胸に繭から出たサンは新しい人生を歩み始めるのでした。めでたしめでたし。
ね、美しい物語でしょう?
でも、原作ではサンの性格は真逆です。空想好きで自己中で無自覚です。成長なんてしないし、マユの正体を知ると、驚いたような、どこかがっかりしたような表情を見せる。
戦後も過去のことなど忘れた風に新しい生活に順応していきます。
でも、それでは「美しい物語」としてふさわしくないのでしょうね。原作を抜きにして考えれば、とてもためになる美しいアニメでした。
ただ、こんなふうに大事なこと(戦争の悲惨さ)を、きれいな花で覆ってしまって本当にいいのか。これでは戦争の悲惨さなんて伝わらないんじゃないかと私は感じました。

