『しあわせのパン』(2012年:日本)

洞爺湖 2010年代

しあわせのパン』はほっこりと、幸せな気分になれる映画でした。

洞爺湖のほとり・月浦にカフェ・マーニを営む水縞くん、りえさん夫妻と、周囲の人々、訪れるお客さんたちとの交流を、四季を通して丁寧に描いた物語です。

監督:三島有紀子, プロデュース:森谷雄, Writer:三島有紀子, 出演:原田知世, 出演:大泉洋, 出演:森カンナ, 出演:平岡祐太, 出演:光石研, 出演:八木優希, 出演:中村嘉葎雄, 出演:渡辺美佐子, 出演:大橋のぞみ, 出演:あがた森魚, 出演:余貴美子
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それぞれの季節に、それぞれのお客さん

マーニには春夏秋冬、それぞれの季節を象徴するお客さんたちが現れます。ちゃんと季節にあった演出なんですね。
夏には、生命力にあふれた若いカップルの恋
秋には、寂しさを抱えた父と子の絆
冬には、老夫婦が迎える人生の終焉。
そして、生命が再生する春には、新たな生命がやってきます。

大泉洋と原田知世

相変わらず、大泉洋が演技で見せる切なそうな、泣きそうな表情がたまらない。
りえさんが悲しそうにしていると、水縞くんも悲しい顔になる。その表情がね、とてもいいんです。

どちらかといえば草食系男子の水縞くんを、大泉さんがどう演じるのだとうかとおもったけれど、なかなかどうして、やさしくて繊細な男性になっていました。さすがです。

原田知世さんは、大人の表情と少女の表情が混在する女優さんだな、と感じました。

彼女の少女時代の映画は何本も見ているのですが、その頃と全く変わらない透明感と、人々を温かく見守る大人の表情もまたステキでした。

人は変化することができる

印象的だったのは「冬のお客さん」の老夫婦。十数年前に店と子供を子供をなくし、今また妻の余命がいくばくもない。

その時、夫がとった行動は「思い出の地・月浦で死ぬ」という選択でした。奥さんはそれを知ってか知らずか、夫についていこうとします。

でも、パン嫌いの奥さんが、お豆の入ったパンを美味しそうに食べるのをみて、夫は考えを改めます。「人は、死の直前まで変化することができる」と。

これは、この映画を通じてのテーマかもしれません。マーニのお客さんも、水嶋くんやりえさんも、人との関わりによって変化していきますから。

パンを分け合う人々

水縞くんが好きな言葉「カンパニオ」のもともとの意味は「パンを分け合う」人々。

映画の中で何度もパンを分け合うシーンが出てきます。それはきっと、愛と信頼のあかしだと思います。
だってパンを分けあっているとき、みんな幸せそうなんだもの。

カフェ・マーニには、アコーディオン奏者、地獄耳のガラス作家、おいしい野菜を作る農家、郵便配達員など、個性豊かな面々があつまり、時に宴を催して共にパンを分けあい、乾杯をします。

その様子がすごく楽しそうで、美味しそうで。できることなら、この宴に混ざって乾杯したい!とすごく思いました。

矢野顕子さんと忌野清志郎さんが歌う主題歌「ひとつだけ」これがもう、映画にぴったりなんですよ。歌詞も曲も。

映画が終わっても、カフェ・マーニの人々の日常がずっと続いているような、続いていて欲しいような気がします。

小説『しあわせのパン』では映画で重要な役割を持つ童話『月とマーニ』もカラーで掲載されています。

ポプラ社
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